So-net無料ブログ作成
検索選択

未来サイト 43話~最終話 [小説 未来サイト 全49話]

 43話 2007年9月  誕生日パーティー
 44話 2007年10月 葛藤
 45話 2007年10月 懐かしい声色
 46話 2007年10月 サイレン
 47話 2007年10月 心のダム
 48話 2007年10月 伝える言葉
最終話 2057年     再会
未来サイト あとがき



43話 2007年9月 誕生日パーティー

 「ただいま~。」
真理は大きな声でドアを開ける。
「お帰り~。」
由香は青森から東京に戻ってきた真理を気持ちよく迎える。
「どうだった?ゆっくりできたぁ?」
と由香は羨ましそうに言う。真理は、
「うん!心も身体もスッキリした。由香は竜馬とずっと一緒だったんでしょ?」
「うふっ。」
由香は意味あり気な笑みを浮かべた。

 由香に呼び出された真理は、渋谷の『フランケン』に向かった。薄暗い扉を開けると、
「HappyBithday~。」
「誕生日おめでとうー。」
由香の他に竜馬と弘志がクラッカーを鳴らした。真理は驚きとともに喜びが湧き上がる。
由香は事前にフランケンのオーナーの許可を取り、真理の誕生日祝いをすることを練っていた。たまたま居合わせたお客も快く真理を受け入れ、ちょっとしたパーティーのようになった。
薄暗い店内で、バースデーケーキに刺さった20本のロウソクの火が真理の顔を照らす。DJの計らいでBGMは「ハッピーバースデー」の曲が架かる。
真理は20本のロウソクを一気に消すと店内はドッと盛り上がった。さらにフランケンのオーナーから真理のためにワインボトルのプレゼントがあり、これには由香も驚いた。
「みんな、ありがとう。」
真理は、由香たちだけでなく、居合わせたお客やオーナーにも感謝した。お客もまた、
「おめでとう。」
と気さくに応えた。
「由香ありがとう。」
真理は改まって由香に感謝の気持ちを込めてハグする。

 誕生日パーティーの帰り、真理は朋生にメールを送った。

[返事遅くなっちゃった。]
[おめでとうメール届いてたよ。]
[ありがとう。]
[今日は由香にも竜馬にも弘志にも、みんなに祝ってもらっちゃった\(^o^)/]
[本当は朋生にも一緒に祝って欲しかったけど、親友の結婚式じゃ仕方ないよね。]
[今、実家でしょ?いつ東京に戻ってくるの?]
[最近、私たち全然会ってないよね?]
[話したいことがあるから、戻ってきたら会えない?]
[落ち着いたら連絡ください。]
 送信

←ポチっと押してね!
この記事のトップへ



44話 2007年10月 葛藤

 いつものように待ち合わせ場所は渋谷になる。
真理は朋生に「話がしたい」とだけ伝えた。それをどう捉えるのか、不安でいた。真理はもう一度やり直そうと思っている。けれども、場合によっては別れを選んだほうが、お互いに良いこともあるのではないか、とも思って いる。不安心でいっぱいな真理は居ても立っても居られず、待ち合わせ時間の20分前に渋谷へ到着した。
携帯の時計をみるとメールの着信に気付く。携帯を開くと、隼人からのメールだった。

[転勤が決まりました。]
[転勤が決まって予想通り地方へ行くことになりました。]
[それで、真理ちゃんと会えるのも今日が最後だと思うんだ。]
[もしよかったら、少しでも良いから会えないかな?]
[今渋谷にいます。連絡待ってます。]
 着信

隼人のメール着信時間を確認すると30分ほど前だった。真理は隼人に返信を送る。そして朋生にもメールを送った。待ち合わせの時間まで15分ある。もし近くにいるのであればと真理は考えた。そして二通のメールが届く。

[今も渋谷にいます。]
[バスロータリーの方です。モヤイ像のところにいて、]
[車椅子に乗っているから僕だってすぐに分かると思うんだけど。]
[出発まで10分あるから、もし会えるのであれば来てくれると嬉しいな!?]
[よろしくです。]
 着信

もう一通は朋生からだった。

[ごめん!遅れそう。]
[すぐ行くから待ってて欲しい。]
 着信

真理は悩んだ。普段待ち合わせに遅れても、朋生がメール返信をすることはなかった。一方、隼人に会えるのは今しかない。真理が居るハチ公前とモヤイ像まで目と鼻の先だ。隼人にはいつも相談に乗ってもらい、一時はその優しさや包容力に魅かれたこともあった。
悩んだ挙句、隼人にお別れの挨拶をしようと考えた。5分もあれば別れの挨拶をして戻って来れる。朋生の遅れるという言葉を信じて、後ろめたい自分の気持ちを説得しモヤイ像へ向かう。
 二~三歩だろうか、真理がハチ公改札口を背に歩き出すと、何処からともなく戦闘機の爆撃のような、もしくは雷が地表に落ちたかのようにゴゴゴゴッと大地が鳴り響く。

←ポチっと押してね!
この記事のトップへ



45話 2007年10月 懐かしい声色

 地鳴りとともに大地の揺れは大きくなる。真理は立っていられず、その場へしゃがみ込んだ。奇声と悲鳴が飛び交い、人々の恐怖を煽る。混乱の波動は渋谷全体を揺るがした。
「真理ーーー。」
奇声や悲鳴とは明らかに違う、懐かしい響きの声色に真理は耳を傾ける。
「真理ー!!」
後ろを振り向くとハチ公改札口から人々の間隙を縫って朋生が現れた。
「朋生ー。」
真理は声を振り絞る。そして、揺れる大地に逆らって立ち上がった。真理は朋生と目を合わせ一瞬の安堵を覚えた。
 ギィーっと駅ビルのきしむ嫌な音がする。その時だった。とてつもなく大きな鳥が翼を広げたかのように、朋生やその周りの人々の上に大きな影が覆い被さった。
ほんの数秒前まで渋谷の情景を眺めて、駅ビルを美しく着飾っていた広告看板は、ゆっくりと朋生を包み込む。
真理の視界に手を差し伸べる朋生が映る。その手を掴もうと手を伸ばすが届く距離ではない。広告看板が地球の表面に到達すると真理の視界は急に開けた。遅れて突風が襲う。

 真理は立ち尽くしていた。ただただ、じっと立ち尽くしていた。
難を逃れた者は広告看板の下敷きとなった人々を救助する。遠くから救急サイレンの音はするが一向に近づく気配はない。
冷静な真理は辺りを見渡す。泣き崩れている女性、大声で救助活動をする男性、混沌とした状況の中で真理はふと気づく。呼吸することを忘れていた。慌てて息を吸うがうまく吸えない。何度も何度も吸うがうまくいかない。息を吐くことを思い出した真理は、やっと呼吸を整える。そして涙腺から液体が流れていることにも気がついた。

←ポチっと押してね!
この記事のトップへ



46話 2007年10月 サイレン

 関東に大地震が起きた。東京はマヒし、全てが狂う。道路は地割れや陥没、水道管は破裂して水浸し、電気系統はショート、木造建築物からは煙があがる。
 朋生と真理を乗せた救急車は救急病院へ向かっているはずだったが、停車してる時間の方が長かった。
真理は、朋生へ話かける。
「朋生、起きて・・・。話するんでしょう?・・・ねぇ、起きてよ・・・。」
朋生はぴくりとも動かず、何の応答もない。
「話するって約束したのに・・・。」
涙が止め処もなく流れる。真理が傷だらけの朋生へ寄り添うと、ポケットから二つ折りにされた紙が落ちた。その紙を拾いあげると、
『真理へ』
と書かれている。真理は朋生の顔を見て、二つ折りの紙を震える手で広げた。


 真理へ

 伝えたいことがいっぱいあり過ぎてうまく話せるか分からないので、手紙を書きました。
覚えてるかな?初詣に行った時、「スポーツでも始めたら?」って言っただろ?実はそれから空手を始めたんだ。
最初は丈夫な体を作るためだったんだけど、フランケンで竜馬が絡まれた時に思ったんだ。俺は真理を守れるのかなって。
あの後、自分のためじゃなく、真理のためにって頑張ってもっと鍛えなきゃと思い、稽古の日数増やしたんだけど、その分真理と話す時間が減って・・・ごめんね。
これからはちゃんと向き合って話すべきだと思っても、話するの下手だし(手紙も慣れてないけど)それでも何とか伝えます。

初めて逢った時から君が好きです。それは今も変わりません。

こんな気持ちになれたのも真理のおかげだし感謝してます。これからもよろしくね!
朋生


「あたしも・・・。」
冷たくなっていく朋生の手を握り、真理は声を大にして泣いた。
動きの鈍い救急車のサイレンが、虚しく鳴り響いていた。

←ポチっと押してね!
この記事のトップへ



47話 2007年10月 心のダム

 緊急事態を予測していた政府は、壊滅的な東京の復旧作業を迅速にすすめた。大地震の翌日には、麻痺していた交通網も一応の機能を果たし、一部では電気やガスも使えるようになっていた。水は各地方の援助もあり、幸い少ないながらも配給された。

 真理は朋生と一夜を過ごした。
霊安室の前のソファに真理は腰掛けていた。看護師に導かれ夫婦と思われる男女が霊安室の前に立つ。真理は軽く会釈をした。
大きな扉が開かれ男女は霊安室へ入る。女性のうめき声は分厚い扉越しでも聞こえてくる。しばらくするとその声は止み、沈黙が続いた。
キィーっと大きな扉が悲しげになく。霊安室から男女は出てきた。
「あの、失礼ですが・・・。」
目を真っ赤にした女性が真理に話し掛けてきた。真理はソファから立ち上がる。
「もしかして真理さん・・・?」
一瞬驚き、
「はい、そうです。」
と答えた。目の赤い女性は一度男性の顔色を見て、姿勢を正しながら真理の方へ向き直した。
「はじめまして、わたくし、朋生の母です。ちょっとお話いいかしら?お掛けになって。」
真理は言われるがままソファに座る。
「貴女のことは朋生から聞いてるわ、自慢の彼女だって。」
目の赤い女性は真理を抱き寄せた。
「無事でよかった。」
女性の抱擁でゆっくりと時が流れる。その懐かしい温もりで真理の冷え切った心を刹那に癒した。
真理は女性と相対し、
「これ・・・。」
と、朋生が書いた手紙を渡した。女性は手紙に目を通し、
「これは貴女が受け取る手紙よ。」
真理の手を取り、手紙を返した。女性は改めて真理を見つめ直し、
「でも、あの子がねぇ・・・。こんな可愛らしい子を彼女にするなんて。」
側に立っている男性は微笑んでいた。
「あの子は・・・、朋生は幸せ者ね。好きな人に看取ってもらえて。」
女性は堪えていた涙が流れ出す。
「あの子は精一杯生きたのよ!さっ、帰りましょう、お家へ。」
と女性は大きな扉の向こうで静かに眠る朋生へ話しかけた。
真理は心のダムから溢れ出る何かを言葉にできず、立ち上がり、大きく深く頭を下げた。目にできた涙のダムはもう、どうしようもなかった。

←ポチっと押してね!
この記事のトップへ



48話 2007年10月 伝える言葉

 両親と一緒に実家へ帰る朋生を見送った真理は、歩いて家に向かった。
陽は落ち始め、美しく切なく、そして恐怖を感じた。明日はあるのだろうか・・・。

 真理の住む周辺地域は大地震の被害は少なかった。真っ暗な部屋に明かりをつけようとスイッチを押すと部屋を照らす。電気は活きていた。
部屋の中は空き巣に荒らされた後のように、物は散乱し家具は自由に倒れていた。
真理は由香と連絡を取ろうと携帯電話を使うが、混雑しているのかなかなか繋がらない。足元に注意してパソコンの前に座る。祈りながらパソコンを立ち上げると、昔と変わらず格闘技サイトのトップページが開いた。
インターネットが使えることを確認すると、一通のメールが届いていた。差出人は小林 隼人だった。

[このメールを読んでいるということは、きっと無事だったんだね。]

真理はそのメールの着信時刻を見ると大地震が起きる直前だった。

[これから話すことは信じられない内容かも知れないけど、理解してほしい。]
[18年前、大学生だった僕はある女性と渋谷のハチ公前で待ち合わせをした。]
[彼女と会うのは数ヶ月ぶりで、すごく緊張したよ。]
[いつも待ち合わせ時刻に遅れてた僕は、彼女によく叱られててね。その日は遅れないように家を出た。]
[電車の中で彼女からメールが届き、普段なら『あと少しだから』と返信しなかったんだけど、久しぶりの再会だから返信したんだ。]
[約束の時間に間に合った僕は、ハチ公改札口を出たところで彼女と目が合った。]
[彼女と僕が歩み寄ったところで、突然大きな揺れが起こった。]
[そこへ、駅ビルの広告看板が覆い被さってきて、『もうダメだ』と思った時、彼女は僕をかばったんだ。]
[もう、そのあとの事は覚えていない。気がつくと僕はベッドの上で数日寝ていたようだった。]
[それから数年が経ち、偶然彼女の友人と再開して、その時に彼女が『未来サイト』を利用していたことを聞いてね。]
[さらに数年後、僕もネットで『未来サイト』を発見し登録したんだ。]
[そして、サイトから紹介された女性が、学生時代の彼女、君なんだよ!]
[信じられないだろう?僕も驚いたよ。でも事実なんだ。]
[初めは、学生時代の僕と君をどうにか別れさせようと考えた。]
[だけどできなかった。君の記憶に僕が消え、僕の記憶に君がいなくなってしまうことが・・・。]
[何より、次元の違う君を救うには、大地震のあの場所から少しでも遠ざけることくらいしか僕にはできない。]
[君には、真理には、どうしても生きてほしいんだ。]
[僕は一度真理と別れ、また真理と出逢えた。]
[真理を失った時は辛かったけど今は違う。また君に救われたんだよ。]
[今度は真理が、今を生きてください。]
[そして、決して悲しまないでください。僕はいくつも真理の側にいるから。]

[最後に、真理に伝えそびれた事があるので言わせてください。]
[初めて逢った時から君が好きです。それは今も変わりません。]
[本当に逢えてよかった。]
[ありがとう。]

[あの大地震だと、君の次元の僕は助からないだろう。だから今の僕と連絡を取れるのもこれが最後だと思う。]
[お別れではありません。]
[僕はこれからの真理の幸せを祈り続けています。]

[では、さようなら。   朋生]
 着信

←ポチっと押してね!
この記事のトップへ



最終話 2057年 再会

 老女は湯呑を持ってきた少女に、
「ありがとう。」
とお礼を言う。少女は、
「またお茶が飲みたくなったら言ってね♪」
満面の笑顔で答えた。少女は自分の背丈と同じ位置にあるドアノブを回し、部屋をあとにした。
一人老女は、パソコンに目を向ける。そして一通のメールに返事を書いた。

[はじめましてではなく、小林 隼人さんとお会いするのは2度目になります。]
[はじめにお会いしたのは50年ほど前ですけど。]
[隼人さん、あなたが『未来サイト』に再登録することをお待ちしておりました。]
[私は真理です。]
[残念なことにあなたの次元では、私は居ないのでしょう。]
[生き残った真理の次元には、あなたが居ないのでしょう。]

[こうは考えられなかった?朋生も私も生き残った次元があると。]
[それが私よ。]
[あの大地震の時、私は朋生にかばってもらい助かったの。]
[朋生は足を挟まれて不自由になってしまわれたけれど、2人とも生き残ったわ。]
[大地震の直前にあなたから私へメールを送ってくれたでしょう?]
[そのメール、私と朋生の2人で読ませてもらったわ。]
[当の本人、朋生はさっぱりな顔してましたけど(笑)]

[あなたは悲しみを背負って生きてこられたのでしょう。]
[また別の次元の私もあなたを失い、辛い思いをしたでしょう。]
[だけど、別の次元の私はあなたの最後のメールで救われたと思うの。]
[だから、ありがとう。]
[この事をあなたに伝えたくて、ずっと待っていたのよ。]

[あなたの最後のメールの言葉を引用させていただくわ。]
[私はこれからのあなたの幸せを祈り続けています。]
 送信

老女は隼人へメールを送った。
 「おばあちゃ~ん、そろそろ行かないと間に合わないよぉ!?」
少女はノックもしないで老女のいる部屋へ飛び込んだ。
老女は長年夫が愛用していた車椅子に座り、少女に後ろを押されて部屋を出る。
「さあ、行きましょう。」
と老女は葬儀場へ向かった。

←ポチっと押してね!
この記事のトップへ



未来サイト あとがき

 次元や時空を超える作品は山ほどあるけど、「未来サイト」の作品ではインターネットで時空を超えて次元を繋げてみました。

次元や時空のお話をすると永遠なので控えさせていただきます。ただ「未来サイト」の補足として、一つだけ言わせてもらいます。
「未来サイト」で、自分の未来の人と繋がるわけじゃないってことです。
主人公の真理は、小林 隼人(38歳の朋生)と出会い、未来人のように思えるけど、そもそも次元が違うから、真理にとって初めて出会う人になります。逆に、小林 隼人(38歳の朋生)は過去の真理と出会うのではなく、別次元の真理と出会うと考えてください。
この作品の中で、大地震を分岐点として、朋生を失う真理と、真理を失う朋生と、2人とも生き残るという3パターンになりますが、全く次元が違います。
逆説で、真理と朋生の出会い事態がない場合、真理が未来サイトに登録したら誰と繋がるのでしょう。
どんな場面でも「未来サイト」で時空を超えて誰かと繋がった瞬間、現在であり未来であるということです。
一つだけ補足を、と言いながら余計に解りづらくなったような気がするので、ここで終わりにします。

最後に、ご愛読いただいた方々へ、ありがとうございました!

←ポチっと押してね!


nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。