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Te amo 1話 [小説 Te amo 全15話+1話]

困惑

 「☆±〇÷¶ー!? %*”&◆+#!!」
中国系マフィアが中国語のような言葉を早口で怒鳴る。俺はクライアントの身を案じ、
「Mr.コバヤシー!?危険だ!ここを離れよう。」
その時、背中から全身へ激痛が走る。と同時に意識を失った。


 木漏れ日が俺の顔に差し込む。その日差しは目を閉じていても燦々と降り注ぎ、否応なしに目を覚まさせる。
上半身を起こそうとするが全くいうことを利かない。手足を動かそうとすると胸元や背中に痛みを伴う。唯一、自由が与えられていたのは目と耳と鼻だった。
 天井を見上げるとヤモリが俺に挨拶をする。先ほど木漏れ日と思っていた日差しは鉄格子の付いた窓から差し込んでいた。薄汚れた壁にもヤモリがへばり付いている。そして、俺はスプリングの硬いベッドに寝ているようだ。他にはスライド式の大きな扉があるだけで殺風景な部屋だった。
 『コンコン』
大きな扉を軽くノックする音がコンクリートの箱部屋に響く。俺は押し黙っていた。
「失礼しま~す。」
現れたのは真っ白な服を着た女だった。
「目が覚めたようね。気分はどうですか?」
白衣の女は慣れた手付きで点滴の液を取り換え始める。
「今日は何日だ?」
白衣の女は手を休めず、
「12月3日よ。」
俺は1週間眠り続けていたようだ。液体を換え終えた白衣の女は、
マリオさん、先生呼んできますね。」
と扉を開けたまま出て行った。
 耳を澄ますと子供がはしゃぐ音や老人同士の談話が聞こえる。老人の話している内容はお互い自慢し合うように自身の病状を語っていた。
 俺の上半身は包帯でグルグル巻きにされている。
「ノリマキか!?」
以前、日本料理で食べた事のある海苔巻きに似ていた。
 点滴針が刺さっている腕ではなく、もう一方の腕をゆっくりと上げる。数cm動かすだけで海苔巻きの身体は痛む。包帯を緩めて消毒液臭いガーゼを剥がすと胸元に3cmほどの縫い痕があった。
 「あなた!?」
俺の妻は泣きながら擦り寄ってきた。息子2人も妻の足元に纏わりつき、覗き込むように俺の顔を見ていた。
「本当に良かった。」
妻はそれ以上言葉を発しなかった。息子2人は妻の足元を離れ、ベッドに乗ろうとしたが妻が制した。妻の後ろには白衣を着た男もいた。そして、
「マリオさん、気分はいかがですか?」
と妻の肩越しに問いかけてくる。俺はようやく自分の置かれている立場を理解した。
やもり.jpg

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