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Te amo 7話 [小説 Te amo 全15話+1話]

雛鳥

 ある新聞の一面に市長と握手をする日本人の男性の写真が載っていた。その新聞の記事を読むと日本の企業がこの国のリゾート開発に参入すると発表されていた。そのリゾート開発の内容は観光客を対象にしたホテルやゴルフ場の建設など、これから大掛かりな工事を行う予定とのこと。日本企業代表と市長は満面の笑みで握手をしていた。
 市長にとってはまたとない好機だろう。これを逃すまいと、市や国をあげてバックアップすると約束したと書かれている。貧しいこの国では外資獲得はもちろん日本の企業や技術を誘致することは必須だ。市長の選択はもっともだろう。

 鳥が朝早くから活発に働いている。真っ青な空を優雅に飛び回り、一羽が立木に留まり暫くすると飛び立つ。今度は別の一羽が立木に留まる。二羽がそれを交互に繰り返していた。つがいの鳥がきっと緑に覆われた木の幹などに巣を作っているに違いないと思いながら、マリオは新聞を折りたたみテーブルの上のコーヒーカップを手に取った。
 病院を退院してから仕事はせず、貯えだけで家族と過ごした。息子2人の成長は早く、毎日たくましく伸び伸びと育っている。その急激な成長をマリオは妻とともに穏やかに見守った。
 ある日のこと。下の息子が夜泣きをした。妻が「どうしたの?」と尋ねると「パパとママが僕を置いてどこかに行っちゃった。」と言う。妻は「パパもママもここにいるわよ。どこにも行かないから安心して寝なさい。」と下の息子を寝かしつけた。
 掛け替えのないその小さな命は寝ている時も精いっぱい力強く生きているのだと知った。そんな暮らしを続けるには、やはり仕事をしなくては続かない。愛する妻と息子2人の将来のためにマリオは職探しを余儀なく迫られた。
雛鳥.jpg
 つがいの鳥が立木に近付くと雛鳥たちは一斉に鳴き出す。つがいの鳥が飛び立つと雛鳥たちは鳴りを潜める。また別の立木からは蝉の鳴き声が聞こえる。耳を澄ますと蝉の鳴き声は二重にも三重にも重なり合唱していた。そんな折、一通の手紙が届いた。その手紙は警察からの手紙だった。
「マリオ、これ何かしら?」
妻は汚れたものを掴むかのように親指と人差し指だけで手紙を持って来た。俺は引出しからペーパーナイフを取り出し封を切って三つ折りの手紙を取り出した。
「なになに?」
妻は手紙を興味深そうに覗き込む。
 手紙の内容はこうだ。ある日本人のボディガードをお願いしたいと書かれていた。日本語が話せ、ボディガードの経験豊富な人物を探していると。差出人は刑事のカルロスからだった。しかも政府お達しの依頼で悪い話ではないと書き加えられている。ボディガードの仕事を嫌っている妻は、
「どうするの?」
と不安そうに言う。その時、息子2人が足元にすり寄り、上の息子が意外なことを言い出した。
「パパは僕たちとママを守るだけじゃなくて、いろんな人を守ってるんでしょ?」
「へ~、パパって凄いんだね!?カッコイイー!」
息子2人は尊敬の眼差しと屈託のない笑顔で見つめる。
「大丈夫だよ。パパが仕事の時は僕たちがママを守るから心配しないで。」
妻は息子2人を抱きしめ、俺を見上げた。
「お前たちが居ればこの家は安全だな!?お父さんはお父さんにしかできない事をする。」
妻の雑念も息子2人に追い払われた。

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youxiang

展開が気になる~!
by youxiang (2008-11-14 15:03) 

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