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小説 Fulfill wish 全5話 ブログトップ

Fulfill wish 1話 [小説 Fulfill wish 全5話]

桜の木

 僕の生まれたこの星では願い事が一つ叶う。叶うと言っても
『お金がほしい』とか『マイホームがほしい』
など物欲の願いは叶わない。願い事が叶うのは、自分の気持ちや意思などだ。例えば父さんは、
『一生家族を守り抜く』
と願ったらしい。きっと叶っていると思う。平凡だがとても居心地の良い家族だ。母さんは、
『いくつになっても綺麗でいたいと思う気持ち』
を願ったらしい。これも叶っていると思う。毎日毎日エクササイズのDVDを見ながら自分磨きをしている。そして2つ年下の妹は、既に願い事をしていた。それは子供のころ、
『いつも食べ物を食べるときは楽しく食べたい』
と願った。僕は『何でそんな願いを?』と妹を笑ったが、今では妹と食事をしていると僕まで楽しくなる。きっと妹の願い事は正しかったのだろう。

 僕は高校2年生。僕の願い事はまだない。急ぐことはないけれど最近はよく考える。こういう時は人生の先輩、祖父ちゃんに聞こう。
祖父ちゃんは3年前に祖母ちゃんが死んでから、いつも縁側に座って一日を過ごしている。身体は丈夫そうだが、すっかり大人しくなってしまった。
「祖父ちゃん、ちょっと話があるんだけどいいかな?」
祖父ちゃんは庭に生えている桜の木を見ながら、
「何じゃ、トシシロ!?」
僕の名前はトシヒロ。だけど祖父ちゃんは『ヒ』が『シ』に変換される。
「祖父ちゃんは、お願い事したの?」
「願い事?ああ、願った。」
「どんなお願い!?」
桜の木を見ていた祖父ちゃんは、何も答えてくれなかった。僕はその場を立ち去ろうと背を向けたとき、
「早く花が咲かんかのぉ。」
『ボケたのかな。』
と、僕は思った。
桜のつぼみ.jpg<Eyespic>

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Fulfill wish 2話 [小説 Fulfill wish 全5話]

ゲーム

 僕の友達のサトシは同じ高校の同級生だ。今日は新しいゲームソフトを楽しむため、サトシの家へ行った。
「ピンポーン」
「はい?」
「あ、サトシ君いますか?トシヒロです。」
「トシヒロ君?どうぞ~。」
インターフォンにでた女性はサトシの姉だ。サトシと姉は親元を離れ、マンションで2人暮らしをしている。サトシの姉は大学2年生でとっても綺麗なお姉さんだ。
「いらっしゃい。ごめんね、こんな格好で。」
サトシの姉は風呂あがりでバスタオル一枚を巻いた状態だった。タオルで長い髪を乾かしながら、
「サトシだったら部屋にいるよ。」
「あ、はい。おじゃましま~す。」
サトシの姉とすれ違うと洗い立ての髪の匂いがフワリと香る。いくらサトシと僕が仲が良くても、その無防備な格好で迎えられるとドキドキする。ドキドキというよりムラムラが正しい。

 サトシの部屋で新作ゲームソフトで遊んでいると、突然サトシが、
「そういえば、同じクラスの大竹っているだろ?アイツの願い事知ってる?!」
僕はゲームをしながら、
「知らない。願い事があったんだ。」
「ああ。それがさぁ、『今付き合ってる彼女のことをずっと好きでいたい』って願ったらしいよ。しかも彼女も大竹のことって願ったらしいんだよ。」
「へぇ~。」
「だけど大竹の彼女、ウソ付いてるね!噂じゃあ、大竹二股掛けられてるって話だし、別の高校の男と手繋いで歩いてるの見たってヤツもいるから。きっと大竹は騙されてるんだよ!」
僕はゲームをしている手を止めて、
「まあ、相手の願い事は確認しようがないからね。」
そう、確認しようがない。しかも自分の願い事が叶っているのかすら分からない。
サトシはため息交じりで、
「はぁ、お前は冷めてんなぁ。でもお前は馬鹿な願い事すんなよな!?」
「おう、サトシもな。」
やっぱりサトシはいいヤツだ。
wii.jpg

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Fulfill wish 3話 [小説 Fulfill wish 全5話]

デート

 「ねぇ、これカワイイー!見て見て~。」
ゲームセンターにあるUFOキャッチャーの景品を『カワイイ』と言う彼女はミウ。僕の彼女だ。ミウは女子高に通う高校2年生、僕と同い年だ。

 出会いは僕の高校の文化祭にミウが遊びに来た。僕のクラスの出し物はカフェ。カフェで人気があったメニューは綿菓子だった。しかも自分で作れるから意外と盛り上がった。その綿菓子機の担当が僕で、ミウは自分で綿菓子が作れず代わりに僕が作った。作っている間、僕はドキドキしていた。そして人生初めてのナンパをする。結果は連絡先の交換ができた。僕のナンパ成功率は100%だ。

 「どうしたのぉ?今日ヘンだよ!?」
ミウはうつむき加減の僕の顔を覗き込むように見つめる。それがまた可愛い
「ミウはさぁ、願い事ってどう考えてるの?」
「う~ん、願い事があったらお願いする。」
ミウの言うことはもっともだ。
「同じクラスのヤツが『今付き合ってる彼女をずっと好きでいたい』って願ったんだって。」
「なんかロマンチックなお願いね。」
「そうかぁ~?!無駄な願い事のような気がするんだけど。」
ミウは嫌な顔をして、
「いいじゃない!誰がどんなお願い事しようと。トシには関係ないでしょ!?」
「そりゃあそうだけど・・・。」
僕は言葉に詰まった。ミウはお構いなしに、
「それより、これカワいくない??」
ミウはUFOキャッチャーの景品を物欲しそうに指さす。そんな彼女を見ていると、
「取ってやるよ。」
僕は彼女に甘い。きっと彼女と結婚したら、尻に敷かれるのだろう。ミウは、
「ありがとー。」
と満面の笑顔で言う。
ミウの笑顔と『ありがとう』の言葉で、僕は満足だった。
UFOキャッチャー.jpg

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Fulfill wish 4話 [小説 Fulfill wish 全5話]

桜の花

 『願い事ってなんだろう?』
彼女のミウは『願い事があれば願う』って言うし、親友のサトシは『馬鹿な願い事するなよ』って言うし、何が良くて何が悪いのかも分からなくなった。でもせっかく一度だけ願いが叶うなら、願うに越したことはない。迷った時は人生の先輩、やっぱり祖父ちゃんに聞くのが一番だ。

 「ねぇねぇ、祖父ちゃん。」
「何じゃトシシロ!?」
祖父ちゃんは縁側に座っている。仙人のようだ。
「祖父ちゃんは願い事したんでしょ?どんなお願いしたか教えて。」
「うむ。」
祖父ちゃんはあぐらを組み直す。僕はその隣に座った。
「ワシの願い事は『祖母さんを死ぬまで忘れない』と願った。」
「へぇ~。」
「祖母さんが先に逝っちまった時、ワシの身体の一部が取れたんじゃ。どこが取れたのか分からないが、ポッカリ穴が開いたようになった。その穴は時が過ぎても塞がらず、逆に広がり始めた。そこでワシは思った。このまま穴が広がり痛みに慣れたころ、祖母さんを忘れてしまうんじゃなかろうかと。」
「祖父ちゃんは本当に祖母ちゃんのことが好きだったんだね。」
僕は祖父ちゃんの話と春の陽射しが温かく、とても心地よかった。
「じゃがなトシシロ。ワシは後悔しとる。」
「えー、なんで??」
祖父ちゃんは春の陽射しを眩しそうに目を細め、
「ワシが退職した時、祖母さんが『これからは自分で起きなさい』と目覚まし時計をくれたんじゃ。他にも祖母さんとお揃いの湯飲み。祖母さんが好きだったこの桜の木。」
祖父ちゃんは陽射しを手で遮り、
箪笥を開ける時も、トイレに行く時も、祖母さんを思い出してしまう。目覚まし時計なんて、とうに壊れて使い物にならんのに捨てられん!」
祖父ちゃんは僕を見て、
「トシシロ、ワシはな、こうして縁側に座って何もしないときが、心の痛みや悲しみを和らげてくれる。ワシは祖母さんを忘れてしまうことを恐れたために無駄な願い事をした。人の記憶は時とともに風化する。それでも思い出に残るものは残るもんじゃ。」
祖父ちゃんは桜の木を見て、
「花は散るから美しい。」
桜の木を見ている祖父ちゃんの横顔はとても切なそうだった。そして目元の深いシワをなぞるように涙がにじんでいた。
桜の花.jpg幸せを運ぶ花の写真素材集

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Fulfill wish 最終話 [小説 Fulfill wish 全5話]

願い事

 僕の生まれたこの星では願い事が一つ叶う。叶うから僕は悩んでいる。昨日、祖父ちゃんの願い事を聞いて少しショックだった。願い事が叶うから必ず幸せになれるわけではないと知ってしまった。それと祖父ちゃんが最後に言ってたけど、祖母ちゃんは願い事をしなかったそうだ。

 願い事が一つ叶うことは、本当に必要なのだろうか?
僕はおかしな考えをしてみた。この星では大昔から願いが叶ったし必要だから今も叶うのだろう。
 もし、願い事が一つ叶うってこと自体がなかったら?
僕はまたおかしな考えをしてみた。『僕はこうでありたい』とか『僕はこうしたい』などと、いくつもの願い事が出てくるのだろう。欲張りな星になりそうだ。
でも悪くない。必ず叶うとは限らないから思いや願いが強くなるだろうし、継続して思いや願いを心に留めておこうとするに違いない。
僕のおかしな考えはやめよう。この星では願い事が一つ叶うんだ。それは変わらない。

 過去に、生涯を発明に費やした人や奉仕活動で人生を終えた人もいる。この人たちは願い事をしたのだろうか?僕は願っていないと思う。なぜなら祖父ちゃんが祖母ちゃんをずっと好きでいたように、好きなことは願わなくても想いは続く。
では何を願うのだろう。忘れがちな意思を願うのか?それも何か違う気がする。

 僕のこれからの人生で色々な出会いや別れがある。就職したり結婚したりもするだろう。これは嫌だけど、事故や病気で短い人生だって考えられる。そんな決まりのない人生だからこそ、一つでいいから願いが叶ってほしい、と思う時が来るはずだ。
『急ぐことない。』
急いだり慌てて願ってもいいことはなさそうだ。いつか来る僕の願い事が、少しでも誰かのためになるようなものだったらお願いしよう。

 そうだ。また色々な人に願い事の話を聞こう。聞いたら僕の考えも変わるかも知れない。新しい発見があるかも知れない。うん、聞いてみよう。
「あなたの願い事ってなんですか?」
桜満開.jpg

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